ジャズベース講座・理論編・Part9ではハーモニックマイナースケールのダイアトニックスケールとダイアトニックコードについて解説します。
ジャズベース講座・理論編・Part7とPart8ではメジャースケールとナチュラルマイナースケールのダイアトニックスケール・コードについて解説しました。まだチェックされてない方はそちらからご一読ください。
音楽理論書やネットではメジャースケールのダイアトニックスケール・コードのみの解説が殆どですが、低音倶楽部ではナチュラルマイナー・ハーモニックマイナー・メロディックマイナーのダイアトニックスケール・コードも解説します。
解説で使用した資料(ト音記号含む)はページの一番下からダウンロード可能ですので是非ご活用ください。
ハーモニックマイナー・ダイアトニックスケールとは
Part7で解説したメジャーダイアトニックスケールと同様に、ハーモニックマイナースケールの各音を基音(ルート)としたスケールの総称をダイアトニックスケールと言います。(今回のPart9ではハーモニックマイナースケールのダイアトニックスケールを意味します)
以下のようなイメージを持っていただけると理解しやすいと思います。
上記はCハーモニックマイナースケール音を例にしています。スケールの各音C・D・E♭・F・G・A♭・Bを基音(Root)としたスケールが存在し、それらをまとめてハーモニックマイナーのダイアトニックスケールと呼びます。
ハーモニックマイナースケール・ダイアトニックスケール
それではハーモニックマイナースケールの各音を基音としたスケールがどのような構成になるのか見ていきましょう。
- Cハーモニックマイナースケールの音を例に解説しています。
- 各スケールごとにより理解を深めるためのポイントを記載しています。
- 各音の下にルートからの度数を略記号で記載しています。(度数で理解することがとても重要です)
度数に関して不安な方はこちらをご一読ください。
Harmonic Minor(ハーモニックマイナー)
今回の基軸となるスケールがハーモニックマイナースケールです。
ポイント:ナチュラルマイナースケールとの違いは短7度が長7度になっている。
Locrian♮6(ロクリアン・ナチュラルシックス)
ハーモニックマイナーの第2音から始まるスケールです。
ポイント:
Cハーモニックマイナーの場合、Cから長2度上のD音から始まるスケールです。ロクリアンモードの第6音が半音高いスケールになっているので『Locrian♮6』というモード名になります。
Ionian♯5(アイオニアン・シャープファイブ)
ハーモニックマイナーの第3音から始まるスケールです。
ポイント:Cハーモニックマイナーの場合、Cから短3度上のE♭音から始まるスケールです。アイオニアンモードの第5音が半音高いスケールになっているので『Ionian♯5』というモード名になります。
Dorian♯11(ドリアン・シャープイレブン)
ハーモニックマイナーの第4音から始まるスケールです。
ポイント:Cハーモニックマイナーの場合、Cから完全4度上のF音から始まるスケールです。ドリアンモードの第4音が半音高いスケールになっているので『Dorian♯11(♯4)』というモード名になります。
Harmonic Minor Perfect Fifth below
ハーモニックマイナーの第5音から始まるスケールです。
ポイント:Cハーモニックマイナーの場合、Cから完全5度上のG音から始まるスケールです。ハーモニックマイナーのダイアトニックスケールの中で最も使用頻度が多いモードが『ハーモニックマイナー・パーフェクト・フィフス・ビロウ』です。とても長い名前なので頭文字を取って『Hmp5↓』というで記号で表します。
ミクソリディアンモードの第2音と第6が半音低いスケールになっており、『Mixolydian♭9♭13(♭2♭6)』という解釈で理解する方が構成音をイメージしやすいです。
Lydian♯2(リディアン・シャープツー)
ハーモニックマイナーの第6音から始まるスケールです。
ポイント:Cハーモニックマイナーの場合、Cから短6度上のA♭音から始まるスケールです。リディアンモードの第2音が半音高いスケールになっているので『Lydian♯2(♯9)』というモード名になります。
Altered dominant♭♭7(オルタード・ドミナント・ダブルフラットセブン)
ハーモニックマイナーの第7音から始まるスケールです。
ポイント:Cハーモニックマイナーの場合、Cから長7度上のB音から始まるスケールです。メロディックマイナーの第7モードである『オルタードスケール』の第7音が半音低いスケールになっているので『Altered dominant♭♭7』というモード名になります。
E♭音の度数は長3度ではなく正確には減4度ですが一般的に用いる長3度としています。
ダイアトニックスケールにローマ数字(ディグリーネーム)を付ける
楽曲やコード分析をより明確にするために各モードにローマ数字を付けて分類します。Keyが変わっても柔軟に対応できますのでディグリーネーム(数字)とスケール名をセットで覚えるようにしましょう。
- Ⅰ ハーモニックマイナー
- Ⅱ ロクリアン・ナチュラルシックス
- ♭Ⅲ アイオニアン♯5
- Ⅳ ドリアン♯11
- Ⅴ ハーモニックマイナー・パーフェクト・フィフス・ビロウ
- ♭Ⅵ リディアン・シャープツー
- Ⅶ オルタード・ドミナント・ダブルフラットセブン
ハーモニックマイナースケール・ダイアトニックコード
ハーモニックマイナースケールにおけるダイアトニックコードです。7種類のスケールの1・3・5・7度の音からどの様なコードが生成されるか見ていきましょう。
Harmonic Minor(ハーモニックマイナー)
Locrian♮6(ロクリアン・ナチュラルシックス)
Ionian♯5(アイオニアン・シャープファイブ)
Dorian♯11(ドリアン・シャープイレブン)
Harmonic Minor Perfect Fifth below
Lydian♯2(リディアン・シャープツー)
Altered dominant♭♭7(オルタード・ドミナント・ダブルフラットセブン)
ダイアトニックコードにローマ数字(ディグリーネーム)を付ける
ダイアトニックスケールと同じく楽曲やコード分析をより明確にするために各ダイアトニックコードにローマ数字を付けて分類します。この事によってKeyが変わっても柔軟に対応できます。ディグリーネーム(数字)・スケール名・コードの種類をセットで覚えるようにしましょう。
- Ⅰm△7 ハーモニックマイナー
- Ⅱm7(♭5) ロクリアン・ナチュラルシックス
- ♭Ⅲ△7(♯5) アイオニアン♯5
- Ⅳm7 ドリアン♯11
- Ⅴ7(♭9♭13) ハーモニックマイナー・パーフェクト・フィフス・ビロウ
- ♭Ⅵ△7 リディアン・シャープツー
- Ⅶdim7 オルタード・ドミナント・ダブルフラットセブン
ダイアトニックスケール・コードの用途
ここまでハーモニックマイナースケールのダイアトニックスケールとコードについて解説してきましたが、これらが実際にどのような用途で使用されるのか説明します。
メジャースケールとナチュラルマイナースケールにおけるダイアトニックスケールとコードと同様に曲の分析やコードの解析時に必ず必要な知識となっています。これらを学んでいないとベースラインの組み立てが難しく、当然ですがアドリブソロも弾けません。
ナチュラルマイナースケールのダイアトニックコードと同様に今回解説した内容はマイナーKey曲の分析時に必要となります。
ただし実際に使用されるスケールはハーモニックマイナースケールとHmp5↓が中心になりますのでこの2つのスケールをしっかり押さえておきましょう。
まとめ
ジャズベース講座・理論編・Part9ではハーモニックマイナースケールにおけるダイアトニックスケールとダイアトニックコードについて解説しました。今回の内容をまとめると以下になります。
- ハーモニックマイナースケールのダイアトニックスケール解説
- ハーモニックマイナースケールのダイアトニックコードの解説
- ハーモニックマイナーにおけるダイアトニックスケール・コードの用途
- 実際に使用されるスケールはハーモニックマイナースケールとHmp5↓が中心
次回Part10ではメロディックマイナースケールのダイアトニックスケールとコードについて解説します。