ベーシストにとって音(音色)作りは最も重要な要素です。クリスチャン・マクブライド氏も『Your sound is your signature』と言っていますよね。
Sound(音・音色)こそがプレーヤーの顔であり、アイデンティティーであり、プレーヤーの個性を決定付ける要素と考えで良いでしょう。
音楽家にとって最も重要な要素である『音作り』ですが、これが非常に難しく奥深くて悩まれているベーシストも多いと思います。アンプ、エフェクター、シールド等が音色に大きく関係していますが、この記事ではその中でも大きなウェイト占めるアンプヘッドについて解説していきます。
アンプの種類
アンプにはコンボタイプとセパレートタイプという2種類があります。コンボタイプはアンプヘッドとキャビネット部が一体型のアンプで、セパレートタイプはアンプヘッドとキャビネット部が独立したアンプになります。
コンボタイプ
セパレートタイプ
コンボタイプが小型で持ち運びがセパレートタイプに比べて容易です。自宅練習用のアンプの殆どがこのタイプですね。セパレートタイプはアンプヘッドが小型の物が多いですが、キャビネットのサイズが大きいのが多く持ち運びには不向きです。リハーサルスタジオやライブハウスのアンプはこのタイプが主流です。
ウッドベースに相性の良いコンボタイプのアンプはこちらで紹介していますので是非ご覧下さい。
アンプヘッドとは
セパレートタイプアンプのキャビネット(スピーカー)ではない部分をアンプヘッドと呼びます。アンプヘッドには音色を調整する機能と音を増幅する部分があり、それぞれ『プリアンプ』『パワーアンプ』と呼ばれます。このプリアンプとパワーアンプが一体となったものがアンプヘッドであるともいえます。
プリアンプの機能をエフェクターのようにペダル型にした機材はベーシストにとって非常に便利なアイテムの一つになります。以下の記事でお勧めをご紹介していますので是非ご覧ください。
アンプヘッドのメリット
アンプヘッドを持ち込まなくてもスタジオやライブハウスにあるアンプを使用すればいいのでは?という考えもありますが、アンプヘッドを使用するメリットがあります。
どこでも自分の音が作れる
スタジオやライブハウスのベースアンプは様々のメーカーが置いてあり、中には普段使い慣れたアンプとキャラクターが違う物もあるでしょう。しかし毎回自身のベースアンプを持参するのは大変ですよね。そこで活躍してくれるのが近年の技術の向上に更に小型で高性能化した持ち運びに便利なアンプヘッドです。
ペダル型プリアンプとの違い
ペダル型のプリアンプを使用するも手段の一つですが、パワーアンプ部はスタジオやライブハウスにあるアンプを使用することになり、そのアンプの特徴の影響を受けてしまいます。
対してアンプヘッドはプリアンプとパワーアンプ機能が備わった機材ですのでキャビネットのみを会場の物を使用することで限りなく自身の理想の音(普段の音)を出せることになります。
ペダル型プリアンプとアンプヘッドのどちらが優れているという事ではなく、使用用途や好み、持ち運びの利便性などから考慮すると良いでしょう。
アンプヘッドの種類
アンプヘッドには増幅方法が異なる2種類のタイプがあります。
真空管タイプ
音の増幅に真空管を使用したアンプが真空管アンプで、プリアンプとパワーアンプの両部分に真空管を使用しているアンプで『フルチューブアンプ』と呼ばれます。
真空管タイプのアンプヘッドは柔らかく暖かみのあるサウンドが特徴ですが、重量があり持ち運びには不向きです。また真空管は消耗品であるため定期的なメンテナンスが必要です。よほどのこだわりがなければ次に紹介する『トランジスタタイプ』をお勧めします。
トランジスタタイプ
音の増幅にトランジスタを使用したアンプが『トランジスタアンプ』です。真空管アンプのようにメンテナンスは必要なくスタジオやライブハウスで使用されているアンプは殆どがトランジスタアンプです。
クリアなサウンドが特徴的で、サイズも小さく真空管アンプよりも小型、軽量なモデルが多いです。
後に紹介しますが、ベースアンプのワット数(出力)が大きいほど音質が安定して質も上がりますので、大出力に対応しているトランジスタタイプのアンプヘッドはベースに向いていると言えます。
アンプヘッドを選ぶポイント
アンプヘッドを選ぶ際に注意するポイントがあります。
W(ワット)数を確認しておく
W(ワット)数とはアンプヘッドの出力の大きさを表す数字で音量に関係しており、数字が大きくなるほど大きな音量を出力できて、より良い音色も得られます。
目安となるワット数ですが、個人練習で仕様するのであれば50Wもあれば十分でしょう。100Wあれば一般的なジャズのライブハウスで問題なく使用できます。キャパシティが100名を超える会場であれば300W以上あれば安心です。
注意点としてキャビネットには機種ごとに許容範囲があり、それを上回るW数のアンプヘッドを接続するとキャビネットの故障に繋がりますのでよく確認するようにしましょう。
インピーダンス(Ω)の値を確認しておく
インピーダンスいうΩ(オーム)の記号で表される確認する必要もあります。
簡単に言うとアンプヘッドのインピーダンスは、キャビネットのインピーダンスを超えない値で接続しなければいけません。超えてしまった場合は故障してしまう危険性もあるので注意が必要です。
アンプヘッドは4Ω、キャビネットは4Ωまたは8Ωの機種が多くラインアップされています。これらのインピーダンスが搭載された機種を使用する場合は、アンプヘッドのインピーダンスがキャビネットのインピーダンス以下となっていますので問題なく接続できます。
ただし4Ωのアンプヘッドと8Ωのキャビネットを接続すると、安全性は問題ありませんがワット数が半分になり、出力が下がってしまいますので注意しましょう。基本的にアンプヘッドとキャビネットを同じΩ数で接続すれば音量が下がる問題は起きません。
W(ワット)数とインピーダンス(Ω)の関係
W(ワット)数とインピーダンスの注意点を挙げましたが、もう少し踏み込んで詳しく解説します。上記では以下の要素が重要でした。
- キャビネットには機種ごとに許容W数があり、それを上回るW数のアンプヘッドを使うと故障につながる。
- アンプヘッドとキャビネットを同じΩ数で接続する必要がある。
上記に加えて更に注意するポイントがあります。アンプヘッドはキャビネットのΩ数に対して出力できるW数の上限が決まっています。
後ほど紹介する『PHIL JONES BASS/ D400』の出力を例に解説します。
商品ページでは出力が『350W/4Ω』と『200W/8Ω』とあります。この意味は接続するキャビネットが4Ωであれば350W出力可能で、8Ωキャビネットであれば200Wの出力になるという事を表しています。
つまり、キャビネットのインピーダンス値(Ω)によってアンプヘッドの最大出力が変わります。
このことから、『PHIL JONES BASS/ D400』の最大出力を発揮させるには4Ωのキャビネットが必要ということになります。(前記しましたが、8Ωキャビネットを使用しても故障することはありません)
アンプヘッドの最大出力を発揮させたいのであればキャビネットのインピーダンス値(Ω)は必ずチェックしましょう。
サイズ・重量をチェック
アンプヘッドのスタジオやライブハウスに向かう手段をまず前提に考えると良いでしょう。
電車等の公共機関を利用するのであればウッドベースや小物も一緒に運ぶことを想定してサイズと重量を決めましょう。
車を利用するのであればサイズと重量はあまり気にしないでいいでしょう。
好きな音を出せることが前提ではありますが、なるべく小型で軽量なヘッドアンプの方がどんな状況でも使用できるのでお勧めです。
コントロール部分で選ぶ
コントロール部分が調整しやすい機種を選びましょう。特にイコライザー(周波数を設定する部分)はパラメトリックとグラフィックで扱いやすさが変わりますので購入前に確認するようにしましょう。
ベースアンプのイコライザーについてはこちらをご覧ください。
おすすめの小型アンプヘッド
ここではウッドベースに相性が良く、持ち運びも容易なアンプヘッドをご紹介します。いずれの機種も人気があり、多数のプロベーシストが使用しているアンプヘッドです。
PHIL JONES BASS / BP-200
世界的に人気のあるベースアンプメーカー、PHIL JONES BASSのBP-200は重さ1.2Kg、超小型で軽量ながら210Wの大出力を備えたベースアンプヘッドです。
PJBが得意とするピュアでワイドレンジなサウンドを限りなくコンパクトサイズに凝縮しており、縦・横幅約17cmの大きさから想像できないほど、余裕のある豊かな音量、反応の良さ、そして艶のある音色を持ち合わせています。
AUX入力からスマホなどからの音楽をミックスして 流すことや、3.5mmヘッドホン出力が装備されているので自宅練習時にも活躍してくれます。
100人規模のライブハウスであればこの一台で問題ないでしょう。
■出力:210W/2Ω、120W/4Ω
■入力端子:インプット、AUXインプット
■出力端子:DI-Out、ヘッドホンアウト、スピーカーアウト(コンボタイプ: スピコン・1/4″フォン兼用)
■コントロール:INPUT LEVEL、BASS、MID、TREBLE、VOLUME、入力感度スイッチ、EQプリ・ポストセレクター(背面)、グランド・リフトスイッチ(背面)
■寸法、重量:176(W) x 53(H) x 170(D) mm、1.2kg
PHIL JONES BASS / D400
PHIL JONES BASS/ D400はより幅広いサウンドメイキングと大出力を備えたアンプヘッドです。
持ち運びが容易なサイズと重量でありながら、最新のデジタルパワーアンプとアナログプリアンプのハイブリッド構成により、PJBが得意とするピュアでワイドレンジなサウンドが特徴です。
BP-200では出力が足りないと感じる場合や、キャパ200〜300人の会場で使用するプレーヤーはD400がお勧めです。黒・青・赤のカラーバリエーションから選べるのも嬉しいですね。
■出力:350w/4Ω、200w/8Ω
■インプット:1xインプット、 1xミニスイッチ(Mute/Low/High)
■アウトプット:DI-Out、PreAmp-Out、Headphone-Out
■コントロール:ローベース、ハイベース、ローミドル、ハイミドル、トレブル
■寸法、重量:244Wx43Hx193Dmm、1.3kg
PHIL JONES BASS / BP-800
軽量コンパクトにして800Wの大出力!!
PHIL JONES BASS / BP-800はデジタルパワーサーキットにより最大800Wの大パワーを誇り、小型ながら完全プロ仕様のアンプヘッドです。この1台があればどの会場でも音量と音圧不足に悩む事はないでしょう。耐衝撃ABSケース付属しているのでツアー中の移動も安心です。
■出力:800w/4Ω, 400w/8Ω
■EQ:5バンド・イコライザー
■インプット:インプット、AUXインプット、ラインイン、FX Send/Return、
■アウトプット:DI-Out、ヘッドホン アウト、ラインアウト、スピーカーアウト(コンボタイプ: スピコン・1/4”フォン兼用)
■電源:100ボルトAC
■本体サイズ:190(W) x 63(H) x 317(D) mm
■重量:2.7 Kg
AGUILAR / Tone Hammer 350
Aguilarはニューヨークでデザインされ、手作りで製造されているベースアンプ、プリアンプのブランドです。ベーシストが求める環境をよく理解したトップクラスのエンジニア、デザイナーによって開発されたAguilarの製品はJohn Patitucci、Miles Mosley、Matt Brewer、Ben Williamsなど超一流のジャズベーシストに愛用されています。
Tone Hammer 350は高い評価を得ているTone Hammerペダルのプリアンプ部を組み込んだ超軽量ベース・ヘッドアンプです。フレキシブルな3バンドEQ、多彩な”Drive”コントロールに加え、350ワットのパワーをギグバッグのアクセサリー・ポーチに入るサイズになっています。重量も1.4kgですので持ち運びにも適していますね。
■出力:350W(4Ω)、175W(8Ω)
■ソリッドステートプリアンプ
■コントロール:トレブル、ミドル、ミドルフリーケンシー、ベース、ドライブ、マスター、プリ/ポストスイッチ、グランドリフトスイッチ
■端子:インプット、XLRバランスアウト、チューナーアウト
■寸法、重量:21W×19D×7Hcm、1.4kg
AGUILAR / Tone Hammer 500
Tone Hammer 500は上記のTone Hammer 350よりワット数が高い機種となり、500Wの出力が可能です。より大音量で安定したサウンドが必要なプレーヤーはこちらがお勧めです。重量も2kgに抑えられているのが嬉しいポイントです。
■出力:500W(4Ω)、250Wx2(8Ω)
■コントロール:ゲイン、トレブル、ミドル、ミドルフリーケンシー、ベース、ドライブ、マスター、プリ/ポストスイッチ、グランドリフトスイッチ、ミュートスイッチ
■端子:インプット、センド/リターン、バランスアウト
■付属品:専用電源コード
■寸法、重量:27.3Wx70Hx21.6Dcm、2kg
GALLIEN-KRUEGER / MB-200
GALLIEN-KRUEGER ( ギャリエンクルーガー ) / MB-200 は片手サイズの超小型で重量が僅か0.9kgでありながら200Wの大出力を備えたベースアンプです。
GKはロックベーシストに使用されているイメージもありますが、Dave Holland、Carlitos Del Puertoなどの超一流ジャズベーシストにも愛用されているメーカーです。
同メーカーのMB150(販売終了済)コンボベースアンプも多数のジャズベーシストが使用しており、ジャズライブハウスの機材としても見かけることが多いですね。
GKサウンドをいつでも手軽に持ち運びできる『MB-200』は小型アンプヘッドの代表機種と言えるでしょう。
■出力:200W(4Ω)、140W(8Ω)
■4バンドアクティブイコライザー搭載
■入出力:インプット(-10dbPADスイッチ付)、スピーカーアウト(スピコン)、ダイレクトアウト、ヘッドホンアウト
■寸法:19.6Wx6.3Hx20.3D(cm)
■重量:約0.9kg
MARKBASS / LITTLE MARK Ⅳ
ベースアンプメーカーとして絶大な人気を誇るMarkbassからLittle Mark Ⅳをご紹介します。リハーサルスタジオでも使用されている大変扱いやすいアンプヘッドです。
LITTLE MARK Ⅲの後継機種で軽量でコンパクト・ハイパワー・暖かくナチュラルなサウンドはそのままにBI-BANDリミッター・3-Wayスイッチ・OLD SCHOOLフィルター・ミュートスイッチが新設されました。
- コンパクトサイズで特徴のある暖かみのあるナチュラルサウンド。
- 新しく採用されたBI-BAND リミッターは速くてダイナミックなレスポンスを発揮。大音量で素早くパンチの効いたアタックが好みなプレイヤーに最適です。
- アップデートされた4 BAND EQは様々なジャンルの音色をカバー。
- OLD SCHOOL FILTERは高周波数をカットし、丸くて滑らかなサウンドを得られます。
- 3 WAY SWITCHはバランスの良い『フラット』と、ハイ&ローをブーストしてミッドを削った『ドンシャリサウンド』の『scooped-mid』を選択可能。『FSW』はオプションのデュアルフットスイッチを使用して、ミュートとscooped-midを即座に切り替えることができます。
- 便利なミュートスイッチと、ラインアウトレベルをコントロールするノブを装備。
- バランス出力のラインアウトを装備。プリ/ポスト EQスイッチにより、ライブなどの際にライン音のみをミキサーに送るか、キャビネットからの音をマイクで拾った音とミックスするかなど、状況に応じて使い分けることができます。
- DV MARK/Markbassの創始者Marco De Virgiliisによって研究開発された独自のパワーアンプ『MPT』(Mark Proprietary Technology)を搭載。レスポンスの早さと暖かくナチュラルなサウンドを再現。
■出力:300W/8Ω、500W/4Ω
■Class D “MPT”
■Solid State
■コントロール:Gain、Master、4-band EQ、LINE level control、OLD SCHOOL
■Pre/post EQ switch (DI)、3 WAY SWITCH(flat/scooped-mid/FSW)、GND LIFT 、Tuner Out、Effect Loop
■寸法: 27.6(W)×8.3(H)×25(D)cm ※HEIGHT: 2 rack units
■重量: 2.45kg
まとめ
お勧めウッドベース用アンプヘッドから7機種ご紹介しました。アンプヘッドはペダル型プリアンプと同様に音作りのメインとなる機材です。
アンプヘッドとプリアンプとはそれぞれ特徴がありますので、ご自身の活動状況に合わせてこれらの機材を取り入れてみてはいかがでしょうか?
『Your sound is your signature』
この記事が音作りの参考になれば嬉しいです。