ジャズベース講座・実践編・Part7ではAll The Things You Areのコード分析(アナライズ)について解説します。
実践編・Part1とPart2でコード分析(アナライズ)について詳しく解説しています。こちらの内容をしっかりと理解した上で今回のPart7を取り組んでください。
解説で使用した資料はページの一番下からダウンロード可能ですので是非ご活用ください。
コード分析(アナライズ)の内容
コード分析(アナライズ)には以下の内容が含まれます。
- Keyの判別
- ダイアトニックコードとノンダイアトニックコードの分別
- 各コードに対応するスケールの把握
- 各コードに度数名(Degree Name)を付ける
- Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ等の定番コード進行の箇所を把握
アナライズをすることによって曲の全体像を把握して正確に演奏することが可能になります。
それでは順番に解説していきます。
Keyの判別
Keyの判別方法は以下の3つの手順を経て判断します。
1. 調号からKeyを判別する
調号からKeyを判別する方法に関してはこちらの記事で詳しく解説しています。
2. コード進行からKeyを判別する
コード進行からKeyを判別するには『ツーファイブ進行』を理解している必要があり、こちらの記事で詳しく解説しています。
All The Things You Areの譜面を見てみましょう。
先ずは調号です。ト音記号の横に♭が4つ付いている事から、この曲のKeyはA♭メジャーかFマイナーに絞られました。
Keyを正しく判別するには曲の最後の解決部分を見ましょう。最後2小節のコード進行がB♭m7-E♭7-A♭Maj7という『Ⅱm7-Ⅴ7-ⅠMaj7』のツーファイブワン進行になっています。この事からKeyはA♭メジャーと判断できます。
3. 耳で最終確認をする
理論的解釈でKey=A♭メジャーと判断出来た後は耳でも確認しましょう。B♭m7-E♭7→A♭Maj7で曲が解決した感じがあるはずです。
以上3つの方法を全て行い、最終的なKeyの判別をします。
各コードに対応するアベイラブルスケール
各コードに対応するアベイラブルスケールを導き出し、度数名(Degree Name)を付けます。
以下の3項目を実践します。
- ダイアトニックコードに対応するダイアトニックスケールの確認
- ノンダイアトニックコードに対するスケールの確認
- 各コードに度数名(Degree Name)を付ける。
2番のノンダイアトニックスケールの導き出す方法はコードごとに異なります。先ずは基本の考えとなる以下の記事をご覧下さい。
これよりアベイラブルスケールの解説に移りますので、アナライズ完成した譜面を見ながら解説を読んでください。譜面はページの一番下からダウンロード可能です。
Aセクション
先ずはAセクション(冒頭8小節)を見ていきましょう。
1〜5小節は全てKey= A♭のダイアトニックコードです。
- Fm7=Ⅵm7(エオリアン)
- B♭m7=Ⅱm7(ドリアン)
- E♭7=Ⅴ7(ミクソリディアン)
- A♭Maj7=(アイオニアン)
- D♭Maj7=(リディアン)
6〜8小節はDm7-G7-CMaj7という進行になっているので、Key= Cと考えます。
- Dm7=Ⅱm7(ドリアン)
- G7=Ⅴ7(ミクソリディアン)
- CMaj7=(アイオニアン)
Bセクション
Bセクションの1〜5小節はコード進行の流れから、Key= E♭と考えます。各コードのアベイラブルスケールは以下になります。
- Cm7=Ⅵm7(エオリアン)
- Fm7=Ⅱm7(ドリアン)
- B♭7=Ⅴ7(ミクソリディアン)
- E♭Maj7=(アイオニアン)
- A♭Maj7=(リディアン)
6〜8小節はAm7-D7-GMaj7という進行になっているので、Key= Gと考えます。
- Am7=Ⅱm7(ドリアン)
- D7=Ⅴ7(ミクソリディアン)
- GMaj7=(アイオニアン)
Cセクション
Cセクションの1〜4小節はコード進行の流れから、Key= Gと考えます。アベイラブルスケールは以下になります。
- Am7=Ⅱm7(ドリアン)
- D7=Ⅴ7(ミクソリディアン)
- GMaj7=(アイオニアン)
5・6小節は7小節目のEMaj7を考慮するとF♯m7-B7となるのが一般的ですが、モーダルインターチェンジの手法を用いたF♯m7(b5)-B7(♭9,♭13)となっています。
アベイラブルスケールは以下になります。
- F♯m7(b5)=(ロクリアン)
- B7(♭9,♭13)=ハーモニックマイナー・パーフェクトフィフス・ビロウ(Hmp5↓)
- EMaj7=(アイオニアン)
モーダルインターチェンジについてはこちらをご覧下さい。
8小節目のC7(♭9,♭13)は次のFm7にスムーズに移行するためのセカンダリー・ドミナントコードです。
セカンダリードミナントコードについてはこちらで詳しく解説しています。
アベイラブルスケールは以下になります。
C7(♭9,♭13)=Hmp5↓
Dセクション
1〜5小節はAセクションと同じコード進行ですので、アベイラブルスケールも同様になります。
- Fm7=Ⅵm7(エオリアン)
- B♭m7=Ⅱm7(ドリアン)
- E♭7=Ⅴ7(ミクソリディアン)
- A♭Maj7=(アイオニアン)
- D♭Maj7=(リディアン)
6小節目はⅣm7なのでモーダルインターチェンジと解釈します。
- D♭m7=Ⅳm7(ドリアン)
Ⅱ-Ⅴ-Ⅰコード進行の箇所を把握する
コード進行がⅡ-Ⅴ-Ⅰになっている箇所を見つけます。(ⅠがないⅡ-Ⅴだけの進行も含む)
ツーファイブに関してこちらの記事で詳しく解説しています。
譜面上では『Ⅱ-Ⅴ』と『Ⅴ-Ⅰ』の部分をカッコと矢印で表します。
Ⅱ-Ⅴ-Ⅰになっている箇所を把握できたらアナライズは完了です。
まとめ
ジャズベース講座・実践編・Part7ではジャズスタンダード曲のAll The Things You Areを題材にコード分析(アナライズ)について解説しました。
『アナライズ』には以下の内容が含まれていました。
- Keyの判別
- ダイアトニックコードとノンダイアトニックコードの分別
- 各コードに対応するスケールの把握
- 各コードに度数名(Degree Name)を付ける
- Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ等のコード進行を把握
アナライズをすることによって曲の全体像を把握して正確に演奏することが可能になります。何度も読み返して、少しずつ理解を深めてください。
次のジャズベース講座・実践編・Part8ではAll The Things You Areのベースラインについて解説します。