ジャズベース講座・実践編・Part2・All Of Meコード分析

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ジャズベース講座・実践編・Part2ではAll Of Meのコード分析(アナライズ)について解説します。

実践編・Part1でコード分析(アナライズ)について詳しく解説しています。こちらの内容をしっかりと理解した上で今回のPart2を開始してください。

ジャズベース講座・実践編・Part1・Fly Me To The Moonコード分析
ジャズベース講座・実践編・Part1ではFly Me To The Moonのコード分析(アナライズ)を5つの手順に分けて詳しく解説します。コード進行の仕組みや、各コードに対応するスケールを理論的に解釈する『アナライズ』を行うことによって曲の全体像が正確に掴めるようになります。

解説で使用した資料はページの一番下からダウンロード可能ですので是非ご活用ください。

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コード分析(アナライズ)の内容

コード分析(アナライズ)には以下の内容が含まれます。

  1. Keyの判別
  2. ダイアトニックコードとノンダイアトニックコードの分別
  3. 各コードに対応するスケールの把握
  4. 各コードに度数名(Degree Name)を付ける
  5. Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ等の定番コード進行の箇所を把握

アナライズをすることによって曲の全体像を把握して正確に演奏することが可能になるのです。

それでは順番に解説していきます。

1. Keyの判別

Keyの判別方法は以下の3つの手順を経て判断します。

1. 調号からKeyを判別する

調号からKeyを判別する方法に関してはこちらの記事で詳しく解説しています。

ジャズベース講座・理論編・Part3・調(Key)について
ジャズベース講座・理論編・Part3・Key(調)について解説していきます。調号からのKeyの判別方法をサークル・オブ・フィフスも含めて詳しく解説しています。

2. コード進行からKeyを判別する

コード進行からKeyを判別するには『ツーファイブ進行』を理解している必要があり、こちらの記事で詳しく解説しています。

ジャズベース講座・理論編・Part15・ツーファイブ進行
ジャズベース講座・理論編・Part15ではジャズで最も使用頻度の高いコード進行である『ツーファイブ』についてFly Me To The Moonを題材に詳しく解説しています。

All Of Meの譜面を見てみましょう。

先ずは調号です。ヘ音記号の横に♯と♭がついていない事から、この曲のKeyはCメジャーかAマイナーに絞られました。

Keyを正しく判別するには曲の最後の解決部分を見ましょう。一番下の段のコード進行がDm7-G7-CMaj7という『Ⅱm7-Ⅴ7-ⅠMaj7』のツーファイブワン進行になっています。この事からAll Of MeのKeyはCメジャーと判断できます。

3. 耳で最終確認をする

理論的解釈でKey=Cメジャーと判断出来た後は耳でも確認しましょう。Dm7-G7→CMaj7で曲が解決した感じがあるはずです。

以上3つの方法を全て行なって最終的なKeyの判別をします。

2. ダイアトニックコードとノンダイアトニックコードの分別

次にアナライズで必要な事は各コードが『ダイアトニック』と『ノンダイアトニック』のどちらに属するか分別します。

再度All Of  Meのコードを見ていきましょう。

以下のように分けることが出来ます。

  • ダイアトニックコード(C7・Dm7・Am7・G7・F7・Em7)
  • ノンダイアトニックコード(E7・A7・D7・Fm7)

3. 各コードに対応するアベイラブルスケール

各コードに対応するスケールの把握、アベイラブルスケールを以下の手順で導き出します。

  1. ダイアトニックコードに対応するダイアトニックスケールの確認
  2. ノンダイアトニックコードに対するスケールの確認
  3. 各コードに度数名(Degree Name)を付ける。

手順1は問題なく出来ると思いますが、問題は手順2です。ノンダイアトニックスケールの導き出す方法はコードごとに異なります。先ずは基本の考えとなる以下の記事をご覧下さい。

ジャズベース講座・理論編・Part14・ノンダイアトニックスケール
ディミニッシュスケールとホールトーンスケールといったノンダイアトニックコードで使用するスケールをコードの種類に分けて詳しく解説しています。

上記の記事でもご紹介していますが、E7・A7・D7・Fm7の4つのノンダイアトニックコードに対するスケールを導き出す方法を確認しましょう。

先ずはE7・A7・D7のようなノンダイアトニック・ドミナントコードの場合です。

Dominant 7th(ドミナントセブンス)

ノンダイアトニックのドミナントセブンスコードに対応する主なアベイラブルスケールは以下の6種類になります。

  • Mixo-lydian
  • Lydian Dominant
  • Mixo-lydian♭9♭13(Hmp5↓)
  • Mixo-lydian♭13
  • Altered
  • Half-Whole Diminish(コンビネーション・オブ・ディミニッシュ)

これら6種類の中からどのスケールが使用可能か判断する方法がありますので是非覚えてください。

ノンダイアトニックのドミナントセブンスコードに対応するアベイラブルスケールの導き出し方は以下の手順で行います。

  1. Keyの判別(曲のKey、または転調している場合は該当部のKeyで判断)
  2. 対象となるコードトーン(1・3・5度)の確認
  3. コードトーンに含まれない2・4・6度を加えることによって『スケール』として成立することから、Keyのアイオニアンで構成されている音を2・4・6度に充てる。
  4. コードトーンと2・4・6度音と加えたスケールの度数を把握して6種類のスケール(Mixo-lydian・Lydian Dominant・Mixo-lydian♭9♭13・Mixo-lydian♭13・Altered・Half-Whole Diminish)中からどれに該当するか判断する。

ではE7から見ていきましょう。

  1. Key=Cメジャー
  2. コードトーンはE・G♯・B・D
  3. 2・4・6度音をCアイオニアンの構成音から充てる→F・A・C音が該当する音
  4. コードトーンと2・4・6度音を加えるとE・F・G♯・A・B・C・Dという音で構成されたスケールが完成。
  5. スケールの度数を確認して6種類のスケールからどれに該当するか判断する。
  6. 度数の結果からこのスケールはMixo-lydian♭9♭13(Hmp5↓)となる。

次にA7を見ていきましょう。

  1. Key=Cメジャー
  2. コードトーンはA・C♯・E・G
  3. 2・4・6度音をCアイオニアンの構成音から充てる→B・D・F音が該当する音
  4. コードトーンと2・4・6度音を加えるとA・B・C♯・D・E・F・Gという音で構成されたスケールが完成。
  5. スケールの度数を確認して6種類のスケールからどれに該当するか判断する。
  6. 度数の結果からこのスケールはMixo-lydian♭13となる。

※このコードはセカンダリー・ドミナントコードです。

セカンダリードミナントコードについてはこちらで詳しく解説しています。

ジャズベース講座・理論編・Part17・セカンダリー・ドミナントコード
セカンダリー・ドミナントコードとはノンダイアトニックコードの一つであり、Ⅴ7→ⅠMaj7以外のダイアトニックコードに対してドミナントモーション(Ⅴ7→Ⅰ)で進行するドミナントコードです。使用例を挙げて詳しく解説します。

最後にD7です。

  1. Key=Cメジャー
  2. コードトーンはD・F♯・A・C
  3. 2・4・6度音をCアイオニアンの構成音から充てる→E・G・B音が該当する音
  4. コードトーンと2・4・6度音を加えるとD・E・F♯・G・A・B・Cという音で構成されたスケールが完成。
  5. スケールの度数を確認して6種類のスケールからどれに該当するか判断する。
  6. 度数の結果からこのスケールはMixo-lydianとなる。

ノンダイアトニックのドミナントセブンスコードは必ずと言って良いほどスタンダード曲にありますので、今回解説した内容を理解して手順を暗記するようにしてください。

Minor 7th(マイナーセブンス)

マイナーセブンスコードがノンダイアトニックコードの場合のアベイラブルスケールは『ドリアン』一択になります。これに関しては細かい理屈は抜きにして暗記しましょう!

アベイラブルスケールの一覧表

これで全てのアベイラブルスケールが判明しました。以下の譜面でご確認ください。

4. 各コードに度数名(Degree Name)を付ける

ダイアトニックコードの度数名は既に分かっていますので、E7・A7・D7・Fm7の4つのノンダイアトニックコードの度数名を明確にしましょう。

ノンダイアトニック・ドミナントコード

『E7』は次のA7がⅥ7であることから、Ⅴ7/Ⅵという度数名になります。左のⅤ7はE7を、右のⅥはA7を指しています。

『A7』は次のDm7がⅡm7であることから、Ⅴ7/Ⅱという度数名になります。左のⅤ7はA7を、右のⅡはDm7を指しています。

『D7』は次のDm7をターゲットとしている訳ではなく、4小節目のG7をターゲットとしたコードとなりⅤ7/Ⅴという度数名になります。左のⅤ7はD7を、右のⅤはG7を指しています。

ノンダイアトニック・マイナーコード

Fm7はKey=Cメジャーの4度に該当するマイナーコードですのでⅣm7と表記します。

Modal Interchange(モーダル・インターチェンジ)

上記の『Ⅳm7』はダイアトニックコードである『ⅣMaj7』の変化形コードで、ナチュラルマイナースケールの第4モードのコードに該当するⅣm7を使用している事になります。

このように別のモード(スケール)を使用する技法を『モーダル・インターチェンジ』と言います。言葉の意味として『モード( modal )+『交換( interchange )』 と理解しましょう。

注意点として『モーダル・インターチェンジ』はメジャーKeyの曲にマイナーKeyに属するモードを使用、またはマイナーKeyの曲にメジャーKeyに属するモードを使用することを意味します。

例えばアイオニアンからリディアンなど、同じメジャーKeyのモード同士を交換することは『モーダル・インターチェンジ』とは言いません。

5. Ⅱ-Ⅴ-Ⅰコード進行の箇所を把握する

コード進行がⅡ-Ⅴ-Ⅰになっている箇所を見つけます。(ⅠがないⅡ-Ⅴだけの進行も含む)

ツーファイブに関してこちらの記事で詳しく解説しています。

ジャズベース講座・理論編・Part15・ツーファイブ進行
ジャズベース講座・理論編・Part15ではジャズで最も使用頻度の高いコード進行である『ツーファイブ』についてFly Me To The Moonを題材に詳しく解説しています。

All Of MeのⅡ-Ⅴ-Ⅰ(Ⅱ-Ⅴ)となっている箇所は以下になります

  • Dm7-G7-CMaj7
  • Em7-A7

譜面上では『Ⅱ-Ⅴ』と『Ⅴ-Ⅰ』の部分をこのようなカッコと矢印で表します。

アナライズ完了

Ⅱ-Ⅴ-Ⅰになっている箇所を把握できたらアナライズは完了です。アナライズ後の譜面のイメージはこのような感じになります。

メロディーがあるリードシートや、上記のようなコード譜にアナライズを行うのが一般的です。

まとめ

ジャズベース講座・実践編・Part2ではジャズスタンダード曲のAll Of Meを題材にコード分析(アナライズ)について解説しました。

『アナライズ』には以下の内容が含まれていました。

  1. Keyの判別
  2. ダイアトニックコードとノンダイアトニックコードの分別
  3. 各コードに対応するスケールの把握
  4. 各コードに度数名(Degree Name)を付ける
  5. Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ等の定番コード進行の箇所を把握

アナライズをすることによって曲の全体像を把握して正確に演奏することが可能になります。

次回のジャズベース講座・実践編・Part3ではジャズスタンダード曲からThere Will Never Be Another Youのアナライズ解説をします。

資料ダウンロード

All Of Meアベイラブルスケール

All Of Me アナライズ譜面

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