複数の楽器をライブやコンサート中にシームレスに持ち替える必要性を感じたことがあるのではないでしょうか?ここでは主にベーシストを対象に2本の楽器をシームレスに持ち替える方法とそれに必要なお勧めの機材をご紹介します。
解説の前に
複数楽器をシームレスに持ち替える方法は大きく分けて以下に分類されます。
- インプットセレクター(ABボックス)を使用
- ラインセレクターを使用
- スイッチャーを使用
この記事では複雑な接続をせず、シンプルに2本の楽器を持ち替えるベストな手法として『インプットセレクター(ABボックス)』についての使用方法とお勧め機材をご紹介しますが、同じ機能を持つ機材に『ラインセレクター』と『スイッチャー』があります。これらの機材は出力を2系統に分けるだけでなく、エフェクター等を組み込んで、より複雑な用途での使用が可能となりますが今回の解説では取り上げません。
インプットセレクター(ABボックス)とは
楽器から送られる信号をAとBとの2系統に分離するもので、スイッチを踏んで切り替えて使用ます。使用例として、
ABボックスの『INPUT A』にウッドベース、『INPUT B』にエレキベースを差し、OUT端子からアンプのINPUTに繋げばABボックスのスイッチを切り替えるだけで2本の楽器をシームレスに持ち替えることが出来ます。
『INPUT A』に4弦ベース、『INPUT B』に5弦ベースを使用する方法も実用的ですね。
インプットセレクター(ABボックス)の種類
ABボックスにもシンプルに2本楽器の入力信号を分けるための用途からプリアンプ搭載型、マルチプロセッサー搭載型の3種類に分類されます。
最初にシンプル型のABボックスをご紹介しますが、以下の2種類に分類されます。
シンプルABボックス・トゥルーバイパス
シンプルに入力信号を2つに分けるための機材です。音に変化を加える事は基本的にありません。
シンプルABボックス・バッファードバイパス
こちらもシンプルに入力信号を2つに分けるためのABボックスですが、トゥルーバイパスとは異なり、バッファー機能が備わったABボックスとなります。
バッファーの役割はノイズの影響を受けやすいハイインピーダンスの信号をノイズの影響を受けにくいローインピーダンスの信号に換えるというものです。
プリアンプ搭載型ABボックス
こちらはプリアンプにABボックスの機能(2つの入力端子)が搭載された機材です。シンプルに入力信号を分けるだけでなく、EQなどの音作りが可能となります。
プリアンプはベーシストにとって必須の機材となりますので、これにABボックス機能が付いていればいろんなシチュエーションに対応できますね。
お勧めのプリアンプは以下でご紹介しています。
マルチプロセッサー搭載型ABボックス
マルチプロセッサーにABボックスの機能(2つの入力端子)が搭載された機材です。上記のプリアンプだけでなく、エフェクター・DI機能・オーディオインターフェイス機能を搭載しているのが特徴です。どんな状況にも対応できるマルチな機材です。
お勧めABボックス
それではお勧めのABボックスをシンプル型・プリアンプ搭載型・マルチプロセッサー搭載型に分けてご紹介します。
シンプルABボックス・トゥルーバイパス
BOSS / AB-2
BOSS / AB-2はAB-2は、2IN/1OUT、1IN/2OUTのどちらでも使用できるABセレクターです。A/B端子に2本のベースを接続し、持ち替えの際にフット操作で入力の切り替え可能です。また、A/B端子のそれぞれにベース・アンプを接続すれば、2台のアンプを使い分けることができます。インジケーター装備されており、現在の入力/出力切り替え状態を一目で確認することができるのも嬉しいポイントです。
シンプルに2本の楽器をシームレスに持ち替えたい方にピッタリの機材です。
- ABセレクター(インプットセレクター)
- 接続端子:Aジャック、Bジャック、IN/OUTジャック
- 消費電流:5mA以下 ※連続使用時の電池寿命 マンガン電池:100時間以上
- 電源:単4乾電池×2
- 寸法:重量:96(W)×90(D)×43(H)mm、240g
One Control ( ワンコントロール ) / Minimal Series AB BOX
One Control / Minimal Series AB BOXは1つの信号を2系統に切り替えることのできるペダルで、非常にシンプルなパッシブ回路で構成されているため様々な使い方に対応します。
OUT端子が2つとINPUT端子が1つですが、OUT側からINPUT側に信号を流すことも可能です。2本のベースや複数の楽器を1台のアンプやミキサーのチャンネルで使う際に、INPUTチャンネルを瞬時に切り替えられるインプットセレクターとしても使用できます。
もちろん1イン 2アウトとして、 2台のアンプの切替や、チューニング時にミュートできるチューナーアウトとしても使用可能です。
シグナルへの影響を最小限に抑えるため、Minimal Series ABBOXは機械式のフットスイッチを用いたトゥルーバイパスを採用しており、パッシブ回路なので電源が無くても動作可能です。
視認性を高めるため、出力チャンネルをLEDインジケーターで表示させる場合は、スタンダードなセンターマイナスのDC9Vアダプター(EPA-2000推奨)が必要ですが、僅かにバッファー機能が入る感じがします。個人的には電源を用いないトゥルーバイパスで使用することをお勧めします。
■電源:DC9V(別売、センターマイナス、EPA-2000推奨、電池は内蔵できません)
■寸法、重量:54Wx 48Hx101mm、約120g
シンプルABボックス・バッファードバイパス
One Control Minimal Series BJF Buffer Split
One Control Minimal Series BJF Buffer Splitはフレキシブルな使い方の出来る、小さく機能的なバッファー・スプリッターで、バッファーのON/OFF、SPLIT/LOOPの切り替えができ、1台で6通りの使用が可能です。
- 入力する楽器を切替える2イン・1アウトのインプットセレクター
- 高品質、ナチュラルサウンドのBJF Buffer(ON/OFF可能)
- 出力を2系統に分けられるスプリットアウト
- 1系統のエフェクトループをON/OFFできる1LOOP Box(トゥルーバイパス/バッファードバイパス切替可能)
- 2系統の出力を切替えるAB Box
- 様々な機器をリモートコントロールできるラッチタイプのフットスイッチ
LEDの点灯、およびBJF Bufferの駆動に電源が必要ですが、それ以外の機能はパッシブペダルとして使用可能です。
バッファー機能も搭載で、より多彩な表現をしたいプレーヤーにはお勧めのABボックスです。
サイズ:93D×39W×33H mm(突起含まず)
101D×53W×49H mm(突起含む)
重量:150g
消費電流:3mA
プリアンプ搭載型ABボックス
EBS MicroBass 3
ベース用の多機能プリアンプ/DI として多くのミュージシャンに愛用されているEBS Micro bass3は白いツマミのクリーンチャンネルと黒いツマミのドライブチャンネルを切り換えて使用することはもちろん、直列か並列を選択しそれらをミックスして使用したり、2本のベースを接続して独立したチャンネルとして使用させることも可能です。
- 多機能2チャンネル・ベースプリアンプ
- 2本のベースを接続しての使用も可能
- 5種のフィルター
- チューブ”クラスA”シミュレーター
- ミックス付きエフェクトループ
- ドライブコントロール
- スピーカーシミュレーション付バランスアウト
- 簡易チューナー機能(A=440Hz固定)も新たに搭載
- 外部オーディオ入力やヘッドホン出力も装備
自宅練習からレコーディング、ライブまで、状況を選ばず最高のパフォーマンスを発揮する2つのINPUT端子を搭載したプリアンプです。
EBS / Stanley Clarke Signature Acoustic Preamp
MicroBass3と同じEBS社のプリアンプ、Stanley Clarke Signature Acoustic Preampはウッドベースとエレキベースをシームレスに持ち替えたいベーシストにお勧めのプリアンプです。
- EBS とレジェンドベーシスト、スタンリー・クラーク氏との共同開発。
- ウッドベースとエレクトリック・ベースを持ち替えて使用可能な独立2chプリアンプ。
- A/Bチャンネル 別々の入力でセッティングが可能で複数の楽器の持ち替え時に便利。両チャンネルのミックスも可能。
- チャンネルBは XLR マイク入力に切替が可能。(48Vファンタム電源使用可能)
- AUX入力でスマホ等からの音源を再生可能。
- ヘッドフォン出力があり自宅練習にも重宝。
- 出力にはXLR / DI端子が搭載。ライン出力にも対応。
- FX LOOPに外部エフェクターを接続可能。
- 電源は専用9V DCアダプターを使用。(電池使用不可)
PROVIDENCE / DUAL BASS STATION DBS-1
プリアンプ機能に加えて、2つのINPUT端子が搭載した機材ですのでコスパも最強です!
- 2本楽器が使用可能な2つのインプット端子を装備
- コントロール:BASS、MID、MID FREQ、TREBLE、MASTER /A・B 各CHANNEL、MUTE、A/B(フットスイッチ)
- 専用電源アダプター付属
- 寸法、重量:9.5W×5.3H×12.5Dcm、370g
ALBIT / A2BP pro MARK II
- 2つのINPUT端子
- 真空管:12AX7×1
- チャンネルA:GAIN、VOLUME、NOTCH、TREBLE、H.MID、L.MID、BASS、SUB.MAS/RETURN SEND
- チャンネルB:VOLUME、NOCH、TREBLE、H.MID、L.MID、BASS
- AB共通:BALANCE VOL、MASTER、PRESENCE
- 各種スイッチ:CH CONNECT、LOOP PHASE、CH SELECT、CH MIX、PRESENCE COLOR、MUTE
- 各種端子:INPUT1、INPUT2、AUX IN、SEND、RETURN、OUTPUT、BALANCE OUT、HEADPHONE、TUNER OUT、AC9V
- 外形寸法:180mm(W)×128mm(D)×68mm(H)
- 重量:950g
- 専用電源アダプター付属
マルチプロセッサー搭載型ABボックス
ZOOM B6
2つのINPUT端子搭載で、エフェクター、プリアンプ、オーディオインターフェイス、ルーパーの機能まで備えたZOOM B6はベーシストにとって最強の機材と言えるでしょう。プロ仕様のハイスペックな仕様になっているにも関わらず、値段もリーズナブルなのが嬉しいですね。ウッドベースにも相性が抜群の機種なので幅広い用途とジャンルに対応できます。
詳しくは以下の記事でご紹介していますので是非ご一読ください。
まとめ
ベーシストを対象に2本の楽器をシームレスに持ち替える方法とそれに必要なお勧めの機材をご紹介しました。今回の内容をまとめると以下になります。
- シンプルに2本楽器の入力信号を分けるならABボックス
- 2本楽器の持ち替え機能と音質の調整やDI機能が必要な場合はプリアンプ
- 2本楽器の持ち替え機能に加えて、エフェクター、プリアンプ、オーディオインターフェイスなどが備わったフルスペック機材ならZOOM B6
用途によって使用する機材が異なりますので、ご自身の活動状況に合わせてご検討ください。この記事が少しでも参考になれば嬉しいです。