ジャズベース講座・理論編・Part10ではメロディックマイナースケールのダイアトニックスケールとダイアトニックコードについて解説します。
ジャズベース講座・理論編・Part7・8・9ではメジャー、ナチュラルマイナー、ハーモニックマイナーのダイアトニックスケール・コードについて解説しました。まだチェックされてない方はそちらからご一読ください。
音楽理論書やネットではメジャースケールのダイアトニックスケール・コードのみの解説が殆どですが、低音倶楽部ではナチュラルマイナー・ハーモニックマイナー・メロディックマイナーのダイアトニックスケール・コードも解説します。
解説で使用した資料(ト音記号含む)はページの一番下からダウンロード可能ですので是非ご活用ください。
メロディックマイナースケールについて
一般的にメロディックマイナースケールは下記のように上行形と下降形で音が異なりますがジャズでは上行形のみをメロディックマイナースケールと定義付けしています。
理由としては下降形がナチュラルマイナースケールになっているからです。メジャスケールのダイアトニックスケールであるナチュラルマイナースケール(エオリアン)をメロディックマイナースケールの一部として捉える考えではスケールの役割、立ち位置、個性を分ける事ができません。
ジャズ理論を勉強される方はメロディックマイナースケール=『メロディックマイナースケールの上行形』と認識していただいて問題ありません。
メロディックマイナー・ダイアトニックスケールとは
Part7で解説したメジャーダイアトニックスケールと同様に、メロディックマイナースケールの各音を基音(ルート)としたスケールの総称をダイアトニックスケールと言います。(今回のPart10ではメロディックマイナースケールのダイアトニックスケールを意味します)
以下のようなイメージを持っていただけると理解しやすいと思います。
上記はCメロディックマイナースケール音を例にしています。スケールの各音C・D・E♭・F・G・A・Bを基音(Root)としたスケールが存在し、それらをまとめてメロディックマイナーのダイアトニックスケールと呼びます。
メロディックマイナー・ダイアトニックスケール
それではメロディックマイナースケールの各音を基音としたスケールがどのような構成になるのか見ていきましょう。
- Cメロディックマイナースケールの音を例に解説しています。
- 各スケールごとにより理解を深めるためのポイントを記載しています。
- 各音の下にルートからの度数を略記号で記載しています。(度数で理解することがとても重要です)
度数に関して不安な方はこちらをご一読ください。
Melodic Minor(メロディックマイナー)
今回の基軸となるスケールがメロディックマイナースケールです。
ポイント:ナチュラルマイナースケールとの違いは短6度と短7度が長6度と長7度になっています。
Dorian♭2 (ドリアン・フラットツー )
メロディックマイナーの第2音から始まるスケールです。
ポイント:
Cメロディックマイナーの場合、Cから長2度上のD音から始まるスケールです。
ドリアンモードの第2音が半音低いと捉える場合は『Dorian♭2』、フリジアンモードの第6音が半音高いと捉える場合は『Phrigian♮6』というモード名になります。
ドリアンモードの方が一般的によく使用しますので、『Dorian♭2』として理解することをお勧めします。
Lydian Augmented (リディアン・オーギュメント)
メロディックマイナーの第3音から始まるスケールです。
ポイント:Cメロディックマイナーの場合、Cから短3度上のE♭音から始まるスケールです。リディアンモードの第5音が半音高いスケールになっているので『Lydian Augumented (Lydian♯5)』というモード名になります。
Lydian Dominant (リディアン・ドミナント)
メロディックマイナーの第4音から始まるスケールです。
ポイント:
Cメロディックマイナーの場合、Cから完全4度上のF音から始まるスケールです。リディアンモードの第7音が半音低いスケールになっているので『Lydian Dominant (Lydian♭7)』というモード名になります。
Mixolydian ♭13 (ミクソリディアン・フラットサーティーン)
メロディックマイナーの第5音から始まるスケールです。
ポイント:
Cメロディックマイナーの場合、Cから完全5度上のG音から始まるスケールです。ミクソリディアンモードの第6音が半音低いスケールになっているので『Mixo lydian♭13』というモード名になります。
Locrian♮2 (ロクリアン・ナチュラルツー)
メロディックマイナーの第6音から始まるスケールです。
ポイント:
Cメロディックマイナーの場合、Cから長6度上のA音から始まるスケールです。ロクリアンモードの第2音が半音高いスケールになっているので『Locrian♮2)』というモード名になります。『Super Locrian』という名称でも呼ばれますので覚えておきましょう。
Altered dominant (オルタード・ドミナント)
メロディックマイナーの第7音から始まるスケールです。
ポイント:
ジャズで頻繁に使用されるスケール、『オルタードスケール』はCメロディックマイナーの場合、Cから長7度上のB音から始まるスケールです。構成度数がかなり複雑ですが、メロディックマイナーの第7モードとして考えれば構成音はイメージしやすいです。
ダイアトニックスケールにローマ数字(ディグリーネーム)を付ける
楽曲やコード分析をより明確にするために各モードにローマ数字を付けて分類します。Keyが変わっても柔軟に対応できますのでディグリーネーム(数字)とスケール名をセットで覚えるようにしましょう。
- Ⅰ メロディックマイナー
- Ⅱ ドリアン・フラットツー
- ♭Ⅲ リディアンオーギュメント
- Ⅳ リディアンドミナント
- Ⅴ ミクソリディアン・フラットサーティーン
- Ⅵ ロクリアン・ツー(スーパーロクリアン)
- Ⅶ オルタード・ドミナント
メロディックマイナー・ダイアトニックコード
メロディックマイナースケールにおけるダイアトニックコードです。7種類のスケールの1・3・5・7度の音からどの様なコードが生成されるか見ていきましょう。
Melodic Minor(メロディックマイナー)
Dorian♭2 (ドリアン・フラットツー )
Lydian Augmented (リディアン・オーギュメント)
Lydian Dominant (リディアン・ドミナント)
Mixolydian ♭13 (ミクソリディアン・フラットサーティーン)
Locrian♮2 (ロクリアン・ナチュラルツー)
Altered dominant (オルタード・ドミナント)
オルタード・ドミナントスケールをルートから3度音程で積み重ねるとm7(♭5)というコードが形成されますが、テンションコードを用いてAlt7コードとして使用する方が一般的です。詳しくは以下をご覧ください。
ダイアトニックコードにローマ数字(ディグリーネーム)を付ける
ダイアトニックスケールと同じく楽曲やコード分析をより明確にするために各ダイアトニックコードにローマ数字を付けて分類します。この事によってKeyが変わっても柔軟に対応できます。ディグリーネーム(数字)・スケール名・コードの種類をセットで覚えるようにしましょう。
- Ⅰm△7 メロディックマイナー
- Ⅱm7 ドリアン・フラットツー
- ♭Ⅲ△7 リディアンオーギュメント
- Ⅳ7 リディアンドミナント
- Ⅴ7 ミクソリディアン・フラットサーティーン
- Ⅵm7(♭5) ロクリアン・ツー(スーパーロクリアン)
- Ⅶ(♭5) オルタード・ドミナント
ダイアトニックスケール・コードの用途
ここまでメロディックマイナースケールのダイアトニックスケールとコードについて解説してきましたが、これらが実際にどのような用途で使用されるのか説明します。
メジャー・ナチュラル・ハーモニックマイナースケールにおけるダイアトニックスケールとコードと同様に曲の分析やコードの解析時に必ず必要な知識となっています。これらを学んでいないとベースラインの組み立てが難しく、当然ですがアドリブソロも弾けません。
メロディックマイナースケールの重要性
Part9で解説したハーモニックマイナースケールで重要なモードは『ハーモニックマイナースケール』と『Hmp5↓』の2種類のみを押さえておけば問題ありませんが、メロディックマイナースケールの全てのダイアトニックスケールとコードはメジャースケールと同じくらい重要で頻度も高いです。
前記したようにダイアトニックスケールとコードの知識は曲の分析時に必ず必要となっています。低音倶楽部でも楽曲分析について取り上げますので、その際にPart7〜10までの内容がある程度暗記できているとスムーズに進むことができるでしょう。
今後は楽曲分析を通じてダイアトニックスケールとコードを完全に暗記して理解を深めていただけたらと思います。
まとめ
ジャズベース講座・理論編・Part10ではメロディックマイナースケールにおけるダイアトニックスケールとダイアトニックコードについて解説しました。今回の内容をまとめると以下になります。
- メロディックマイナースケールのダイアトニックスケール解説
- メロディックマイナースケールのダイアトニックコードの解説
- メロディックマイナーにおけるダイアトニックスケール・コードの用途
- メロディックマイナースケールの重要性
次回ジャズベース講座・理論編・Part11では機能(Function) / 代理コードについて解説します。