ジャズベース講座・実践編・Part1・Fly Me To The Moonコード分析

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ジャズベース講座・実践編・Part1ではFly Me To The Moonのコード分析(アナライズ)について解説します。

Part1から実践編の本編がスタートします。実践編の概要についてはこちらをご覧ください。

ジャズベース講座・実践編・ガイドライン
『ジャズベース講座・実践編』は基礎編と理論編を終了した受講者さんを対象にした講座になります。実践編の概要を項目に分けて説明しています。

解説で使用した資料はページの一番下からダウンロード可能ですので是非ご活用ください。

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コード分析(アナライズ)とは

コード進行の仕組みや、各コードに対応するスケールを理論的に解釈する事を『コード分析(アナライズ)』といいます。

ジャズを勉強し始めるとコードトーンは理解できても、このコードに対して何のスケールか使えるの?と疑問に思ったことがあるのではないでしょうか。『アナライズ』はこのような問題を解決する為に行います。

具体的には以下の内容が含まれます。

  1. Keyの判別
  2. ダイアトニックコードとノンダイアトニックコードの分別
  3. 各コードに対応するスケールの把握
  4. 各コードに度数名(Degree Name)を付ける
  5. Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ等の定番コード進行の箇所を把握

アナライズをすることによって曲の全体像を把握して正確に演奏することが可能になるのです。

それでは順番に解説していきます。

1. Keyの判別

先ずは曲のKeyの判別から行います。これが分からないとアナライズをすることは不可能です。

Keyの判別方法は以下の3つの手順を経て判断します。

1. 調号からKeyを判別する

調号からKeyを判別する方法に関してはこちらの記事で詳しく解説しています。

ジャズベース講座・理論編・Part3・調(Key)について
ジャズベース講座・理論編・Part3・Key(調)について解説していきます。調号からのKeyの判別方法をサークル・オブ・フィフスも含めて詳しく解説しています。

2. コード進行からKeyを判別する

コード進行からKeyを判別するには『ツーファイブ進行』を理解している必要があり、こちらの記事で詳しく解説しています。

ジャズベース講座・理論編・Part15・ツーファイブ進行
ジャズベース講座・理論編・Part15ではジャズで最も使用頻度の高いコード進行である『ツーファイブ』についてFly Me To The Moonを題材に詳しく解説しています。

それではFly Me To The Moonの譜面を見てみましょう。

先ずは調号です。ヘ音記号の横に♯と♭がついていない事から、この曲のKeyはCメジャーかAマイナーに絞られました。

次にコード進行を見てみましょう。よくある間違いで冒頭のコード進行を見てAマイナーKeyと判断する方がいますが、これは間違った判別方法です。

Keyを正しく判別するには曲の最後の解決部分を見ましょう。一番下の段のコード進行がDm7-G7-CMaj7という『Ⅱm7-Ⅴ7-ⅠMaj7』のツーファイブワン進行になっています。この事からFly Me To The MoonのKeyはCメジャーと判断できます。

3. 耳で最終確認をする

理論的解釈でKey=Cメジャーと判断出来た後は耳でも確認しましょう。Dm7-G7→CMaj7で曲が解決した感じがあるはずです。

以上3つの方法を全て行なって最終的なKeyの判別をします。

2. ダイアトニックコードとノンダイアトニックコードの分別

次にアナライズで必要な事は各コードが『ダイアトニック』と『ノンダイアトニック』のどちらに属するか分別します。

Fly Me To The Moonのコードを見ていきましょう。

譜面に記載しているように、E7・A7・E♭dimの3つのコードがノンダイアトニックで他は全てダイアトニックコードになります。

ダイアトニックコードについては以下の記事をご覧下さい。

ジャズベース講座・理論編・Part7・ダイアトニックスケール・コード
ジャズベース講座・理論編・Part7ではダイアトニックスケールとダイアトニックコードについて解説します。音楽理論を勉強されたことがある方であれば一度は聞いたことがあるスケール名ですよね。ジャズを学んでいく上で最重要項目と言える『ダイアトニックスケール・コード』を詳しく解説していきますので是非最後までご一読ください。

3. 各コードに対応するアベイラブルスケール

各コードに対応するスケールの把握、アベイラブルスケールを導き出します。既にダイアトニックとノンダイアトニックのコード分別が完了しているので以下の手順を行います。

  1. ダイアトニックコードに対応するダイアトニックスケールの確認
  2. ノンダイアトニックコードに対するスケールの確認
  3. 各コードに度数名(Degree Name)を付ける。

手順1は問題なく出来ると思いますが、問題は手順2です。ノンダイアトニックスケールの導き出す方法はコードごとに異なります。先ずは基本の考えとなる以下の記事をご覧下さい。

ジャズベース講座・理論編・Part14・ノンダイアトニックスケール
ディミニッシュスケールとホールトーンスケールといったノンダイアトニックコードで使用するスケールをコードの種類に分けて詳しく解説しています。

上記の記事でもご紹介していますが、E7・A7・E♭dimの3つのノンダイアトニックコードに対するスケールを導き出す方法を確認しましょう。

先ずはE7・A7のようなノンダイアトニック・ドミナントコードの場合です。

Dominant 7th(ドミナントセブンス)

ノンダイアトニックのドミナントセブンスコードに対応する主なアベイラブルスケールは以下の6種類になります。

  • Mixo-lydian
  • Lydian Dominant
  • Mixo-lydian♭9♭13(Hmp5↓)
  • Mixo-lydian♭13
  • Altered
  • Half-Whole Diminish(コンビネーション・オブ・ディミニッシュ)

これら6種類の中からどのスケールが使用可能か判断する方法がありますので是非覚えてください。

ノンダイアトニックのドミナントセブンスコードに対応するアベイラブルスケールの導き出し方は以下の手順で行います。

  1. Keyの判別(曲のKey、または転調している場合は該当部のKeyで判断)
  2. 対象となるコードトーン(1・3・5度)の確認
  3. コードトーンに含まれない2・4・6度を加えることによって『スケール』として成立することから、Keyのアイオニアンで構成されている音を2・4・6度に充てる。
  4. コードトーンと2・4・6度音と加えたスケールの度数を把握して6種類のスケール(Mixo-lydian・Lydian Dominant・Mixo-lydian♭9♭13・Mixo-lydian♭13・Altered・Half-Whole Diminish)中からどれに該当するか判断する。

ではE7から見ていきましょう。

  1. Key=Cメジャー
  2. コードトーンはE・G♯・B・D
  3. 2・4・6度音をCアイオニアンの構成音から充てる→F・A・C音が該当する音
  4. コードトーンと2・4・6度音を加えるとE・F・G♯・A・B・C・Dという音で構成されたスケールが完成。
  5. スケールの度数を確認して6種類のスケールからどれに該当するか判断する。
  6. 度数の結果からこのスケールはMixo-lydian♭9♭13(Hmp5↓)となる。

次にA7を見ていきましょう。

  1. Key=Cメジャー
  2. コードトーンはA・C♯・E・G
  3. 2・4・6度音をCアイオニアンの構成音から充てる→B・D・F音が該当する音
  4. コードトーンと2・4・6度音を加えるとA・B・C♯・D・E・F・Gという音で構成されたスケールが完成。
  5. スケールの度数を確認して6種類のスケールからどれに該当するか判断する。
  6. 度数の結果からこのスケールはMixo-lydian♭13となる。

※このコードはセカンダリー・ドミナントコードです。

セカンダリードミナントコードについてはこちらで詳しく解説しています。

ジャズベース講座・理論編・Part17・セカンダリー・ドミナントコード
セカンダリー・ドミナントコードとはノンダイアトニックコードの一つであり、Ⅴ7→ⅠMaj7以外のダイアトニックコードに対してドミナントモーション(Ⅴ7→Ⅰ)で進行するドミナントコードです。使用例を挙げて詳しく解説します。

ノンダイアトニックのドミナントセブンスコードは必ずと言って良いほどスタンダード曲にありますので、今回解説した内容を理解して手順を暗記するようにしてください。

Diminished 7th(ディミニッシュセブンス)

最後にE♭dimコードに対応するスケールはDiminished scale (ディミニッシュスケール)になります。

ディミニッシュスケールは半音-全音で構成された『コンビネーション・オブ・ディミニッシュスケール』(通称コンディミ)もありますが、ディミニッシュコードで一般的に使用されるスケールは上記の全音-半音で構成された『ディミニッシュスケール』です。

アベイラブルスケールの一覧表

これで全てのアベイラブルスケールが判明しました。以下の譜面でご確認ください。

4. 各コードに度数名(Degree Name)を付ける

ダイアトニックコードの度数名は既に分かっていますので、E7、A7、E♭dimの3つのノンダイアトニックコードの度数名を明確にしましょう。

ノンダイアトニック・ドミナントコード時の度数名

『E7コード』は次のA7がⅥ7であることから、Ⅴ7/Ⅵという度数名になります。左のⅤ7はE7を指しています。Ⅴ7になる理由はA7を1度と捉えた場合、E7はA7の5度上のドミナントコードとなるからです。右のⅥはA7を指しており、Key=Cメジャーの6度音なのでⅥとなります。

この辺りが少々複雑ですが、コードアナライズの経験を積めば問題なく理解できると思います。こちらの実践編で一緒に勉強していきましょう!

次にA7です。

『A7コード』は次のDm7がⅡm7であることから、Ⅴ7/Ⅱという度数名になります。左のⅤ7はA7を指しています。Ⅴ7になる理由はDm7を1度と捉えた場合、A7はDm7の5度上のドミナントコードとなるからです。右のⅡはDm7を指しており、Key=CメジャーのダイアトニックコードなのでⅡとなります。

経過和音(パッシングコード)

E♭dimコードは前のDm7と次のEm7を繋ぐ経過和音(パッシングコード)と呼ばれるコードに分類されます。ルート音を半音で繋ぐ場合や、コードをスムーズに繋ぎたい時に使用されるコードで、ジャズスタンダード曲でも頻繁に出てきます。

度数名としては『♭Ⅲdim』、または『♯Ⅱdim』としましょう。この小節は譜面によって異名同音であるD♯dimと記載される場合もあるので『♯Ⅱdim』でも問題ありません。

5. Ⅱ-Ⅴ-Ⅰコード進行の箇所を把握する

コード進行がⅡ-Ⅴ-Ⅰになっている箇所を見つけます。(ⅠがないⅡ-Ⅴだけの進行も含む)

ツーファイブに関してこちらの記事で詳しく解説しています。

ジャズベース講座・理論編・Part15・ツーファイブ進行
ジャズベース講座・理論編・Part15ではジャズで最も使用頻度の高いコード進行である『ツーファイブ』についてFly Me To The Moonを題材に詳しく解説しています。

Fly Me To The MoonのⅡ-Ⅴ-Ⅰとなっている箇所は以下になります。

  • Dm7-G7-CMaj7
  • Bm7(♭5)-E7-Am7

譜面上では『Ⅱ-Ⅴ』と『Ⅴ-Ⅰ』の部分をこのようなカッコと矢印で表します。

アナライズ完了

Ⅱ-Ⅴ-Ⅰになっている箇所を把握できたらアナライズは完了です。アナライズ後の譜面のイメージはこのような感じになります。(同じコードに対してはスケール名を記載していません)

メロディーがあるリードシートや、上記のようなコード譜にアナライズを行うのが一般的です。

まとめ

ジャズベース講座・実践編・Part1ではジャズスタンダード曲のFly Me To The Moonを題材にコード分析(アナライズ)について解説しました。

『アナライズ』には以下の内容が含まれていましたね。

  1. Keyの判別
  2. ダイアトニックコードとノンダイアトニックコードの分別
  3. 各コードに対応するスケールの把握
  4. 各コードに度数名(Degree Name)を付ける
  5. Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ等の定番コード進行の箇所を把握

アナライズをすることによって曲の全体像を把握して正確に演奏することが可能になります。

次回のジャズベース講座・実践編・Part2ではジャズスタンダード曲からAll Of Meのアナライズ解説をします。

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Fly Me To The Moon アナライズ

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