ジャズベース講座・理論編・Part16はSubstitute Dominant Chord(裏コード)について解説します。
Substitute Dominant Chordとは
『Substitute Dominant Chord』とは、裏コード・代理コード・サブファイブ等と呼ばれるコードで、ドミナントセブンスコードの代理コードを意味します。
この記事ではこれより『裏コード』に統一して説明します。
実用性が高い『裏コード』を知っておくと演奏の幅が広がりますので、是非この機会にマスターしましょう。
トライトーン
裏コードを学ぶ前に『トライトーン』を理解する必要があります。
トライトーンとは2つの音の音程が増4度(減5度)の関係を意味します。
音程に関して不安な方は以下の記事をご覧ください。
この増4度音程の特徴として、2つの音を上下反対にしてもトライトーンが形成されます。
例えばCとAという音があったとします。この場合の音程は長6度になりますが、AとCの音程は短3度となり、異なった度数になります。
しかしトライトーンでは2つの音を上下反対にしても同じ度数になります。BとFを例に見てみましょう。
譜面のように、BからFは減5度(増4度)で、FからBは増4度(減5度)となり同じ度数となります。
ドミナントコードの3度と7度音がトライトーンになっているのですが、このことが裏コードを理解する上でとても重要になります。
ドミナントコードの特徴
ドミナントコードは不安定な響きを持つコードですが、これはトライトーン自体が不協和音であるのが原因です。
別の言い方をすればドミナントコードに含まれる3度と7度音のトライトーンがこのコードの特徴を決定付けています。
ドミナントコードに限った事ではありませんが、コードの特徴・キャラクターを決定付ける音は3度と7度音になります。(Minor7th♭5・Aumented・Diminishedの場合は5度音も含む)
裏コード
本題の裏コードの解説に入ります。裏コードというのは同じトライトーンを持ったドミナントコードを意味します。
G7とD♭7を例に見ていきましょう。
この2つのコードは同じトライトーンが含まれています。
G7では3度のBと7度のFがトライトーンで、D♭7では3度のFと7度のB(C♭)がトライトーンです。
どちらもBとFが含まれており、どちらもトライトーンになっているのが分かると思います。
ドミナントコードに含まれる3度と7度音のトライトーンがこのコードの特徴を決定付けているので、G7の裏コードはD♭7、D♭7裏コードはG7となります。
ルート音に着目してみると、これも増4度(減 5度)の関係にあります。
したがって、ドミナントコードの裏コードはルートから増4度(減 5度)のドミナントコードとなります。
裏コード関係になっているドミナントコードを一部挙げてみます。
- C7⇄F♯7(G♭7)
- F7⇄B7
- B♭7⇄E7
- E♭7⇄A7
- A♭7⇄D7
上記コードは全て同じトライトーンを持っています。
裏コード実践編
実際に裏コードが使用されているコード進行と、活用法も合わせて解説します。
裏コードが使用されている例
[A]はDm7-G7-CMaj7というツーファイブワン進行ですが、[B]は2小節目がG7の裏コードであるD♭7に変化した進行です。
注目すべきポイントはルートモーションで、Dm7-D♭7-CMaj7となれば半音でルートが推移する事になります。
G7とD♭7は同じトライトーンを持つコードで、代理コードとしての機能はありますが、ルート音が異なるので聴こえ方は変わります。
裏コード活用法
ドミナントコードが使用されている箇所であればいつでも裏コードを使用する事が可能な訳ではありません。シチュエーションごとに分けて解説します。
テーマ(曲のメロディー)時におけるベースラインを弾く場合
メロディーと裏コードの構成音がぶつかる場合があります。
[A]と[B]は同じメロディーと使用していますが、2小節目のコードが裏コードの関係にあります。[A]のG7ではメロディーとコードの関係は問題ありませんが、[B]のD♭7とメロディーのD音が半音でぶつかってしまい不協和音となります。
このような不協和音を回避するためには、アボイドノートの知識があると判断がしやすくなります。以下の記事で解説していますので是非ご一読ください。
他の奏者のアドリブソロコーラス時におけるベースラインを弾く場合
[A]が譜面に記載されているコード進行で、[B]がベースのみ裏コードを弾いたコード進行と仮定します。
アドリブ時におけるベースラインの場合は、ミディアムテンポ(bpm=120〜)以上であれば基本的にいつでも裏コードを想定して弾く事が可能です。ただし音楽はバランスが非常に重要ですので、ドミナントコードの度に毎回裏コードを使用するのは控えたほうが良いでしょう。
バラードなどのスローテンポの曲の場合は、コード楽器がG7を、ベースがD♭7を弾いている訳ですから、やや不協和音に感じるかもしれません。この辺りは各プレーヤーが耳で判断して、問題なければ裏コードを使用しても良いと思います。
ベースソロを弾く場合
ベースソロの場合はテンポや頻度に関係なく、いつでも裏コードが使用可能です。(もちろんバランスは考慮すべきですが)
アドリブ解説時に詳しく説明しますが、コードトーンやスケール音をそのまま使ってフレーズを組み立てるよりも、裏コードを想定してコードからアウトした音を選択する方がジャズらしいソロとして演出することができます。
まとめ
ジャズベース講座・理論編・Part16・Substitute Dominant Chord・裏コードについて解説しました。
実用性が高い『裏コード』を知っておくと演奏の幅が格段に広がりますので、是非この機会にマスターしましょう。